【爺の憂鬱】7/3

今回の物語の舞台はこの壮大な岩峰群である・・・


爺（じい）！　何処へ行くのか？
そっちの道では無いぞ！

えっ！？　いやぁ～姫様、〇峰山へのハイキングも足慣らしには良いかと思い、つい・・・。

何をとぼけた事を抜かしておる。この狸ジジィが！　そなた、逃げようとしたな。
この期に及んでまだそんな戯けたボケで逃げ切ろうとするその性根。叩き直してくれるわ。仕置きじゃ！

ひぃぃ！　姫様・・・ご勘弁を・・・。

ならん！仕置きじゃ！　　一発目から　5.10c　「あばたもえくぼ」　を用意してくれよう！

ひぃぃ！　無理です。　5.8　あたりでお許しを・・・。

ならん、ならんぞ。たっぷり仕置きしてくれようぞ！　ハハハハハ。





さて到着したが・・・。ん？　既にルートに取り付いている者どもがおるではないか！
爺よ、どけてこい。もしも逆らうようなら手加減はいらん、・・・「斬れ！」

ひぃっ！　それは無理でございます。先に取り付いたあの者達に優先権と、それに無垢な民にも生きる権利がございます。　ここは、この爺に免じて堪えてくだされ。

うむ、致し方ないな。わらわも無粋な「血」は好まん。　では爺、隣のあのルート「ツイスト」5.10aで許してやろうぞ。見ろ、喜べ！

ひぃぃ～、こんな70°はありそうなスラブは爺には無理でございます。

ガタガタ抜かしていると、もっとグレードを上げてくれるぞ。わらわの華麗な登攀を良く目に焼き付けておくが良いわ。それと爺、くれぐれもビレイを怠るなよ。　まぁ、わらわは万が一にも落ちぬがな。　ハハハハハハ。

御意。　爺は姫様が落ちる姿を想像する事すら、かないませんぞ。しかし、姫様は我が藩の宝。爺は我が命を賭けて姫様のリードをビレイ致しまする！

良く言ったぞ！爺。　少々役者不足のような気がするが、わらわに万一の時あらば真っ先にその軽い命を投げ出すのだぞ。



さて爺、トップロープにしてやったぞ。

流石は姫様、見事な登攀でござる！

当たり前だ！馬鹿めが。　では爺、そなたの番だぞ。断わっておくが、わらわにビレイの負担をかけないよう登攀するのだぞ！

そ、それは無理でございます！　こんな恐ろしいスラブ、爺は必ずや、それも何回も落下いたします。さらに5.10aは爺の限界ギリギリでございます。

黙らっしゃい！　能書きはよいから、とっとと登れ！




ほれっ！　モタモタしていると隣の10cを登攀している「おなご」に追いつかれるぞ、爺！
そなたの10aは、隣よりグレードが二段階も易しいのだぞ。
万が一にも爺が敗れる事あらば誉れ高き我が藩の名誉に疵がつくのだ。
敗れたあかつきには、殿より「切腹」の命は免れぬであろう。　ガンバだ！爺！


ひぃぃぃぃぃ！！！



逃げる爺



追う、おなご




あひぃ～。これ以上は無理です～。もう落ちそうです、姫様。

ガンバだ！爺。　そこがカクシン（核心部の事）ぞ！


あぁ～！、落ちる・・・・・・。



「ぎゃぁぁぁぁぁぁ！！！！」


ん？　どうされましたか！？　姫様！

ト・ト・トカゲがぁ、あ・足元に・・・！！　　爺！　早く・・・早くトカゲを始末しなさい！
ヒィィィ～、怖ィィィ・・・・・早くしないと、映画「岳」の長澤まさみの様にロープを斬るぞ～！


ひぃぃぃぃぃぃ！！
姫様！たかがトカゲ一匹でザイルパートナーを見捨てる気ですか！　
すでに登攀中で、爺はもう力尽きて落ちそうなんですから・・・。
姫様！逆にテンションをお願い申す！　というか、姫様がロープを斬ると爺は確実にあの世行きですぞ！！



ふぅ・・・。爺よ！　この姫が見事トカゲ退治をしてやったぞ！　喜べ！

トカゲが勝手に逃げただけではないのですか？

何を云う！　姫が退治したのだ！　つべこべ言うとロープを斬るぞぉ！

ヒィィ～、やめて下され～！！





姫様！　無事、完登いたしました。


・・・・・・・・・・・・、お主、本当に完登したのか？


え？　えぇ、まぁ・・・姫様の完璧なビレイのおかげで完登できましたが・・・・・・。


このうつけ者めが！　喝（カァーツ）！！！

ひぃぃぃぃぃぃ。

そなた、わらわの眼が節穴だと思っているのか？！
爺よ、お主「カクシン」のボルトを一回、踏んだな？・・・・・


い・いや・あの・その・・・・・、あまりに「カクシン」が難しく、そのぉ・・・・・・・・・


この「チョンボ野郎めがぁ」！！
この場でこの姫自らが、成敗してくれるわ！　観念せい！


あわわわ、お・お許しを・・・・。


ならん、ならん！　「チョンボ」は藩令で打ち首獄門の大罪であるぞぉ！

しかし、・・・お上にも御慈悲はある。
爺を今、一撃で斬ってしまえば、本日わらわのビレイをするものがおらんしな。
よし、爺！今一度ツイストを登攀してみよ！　完登すれば許してやる。

ひぃぃ！成敗されるよりはマシです。もう一度やらせていただきます。


おぉ！爺や、何回も落ちながらも、ツイストを完登したではないか！　偉いぞ！爺。　
よし！早く支度せぇ！　次へ行くぞ！・・・

げっ！まだ次へ行くのですか？

当たり前だ！愚か者めが。　次も5.10aで許してやるぞ。ルート名は「トムと一緒」。
「爺と一緒」に「トムと一緒」を一撃だぁ！


あまり・・・、うけませぬぞ。・・・姫。


うつけ者めが！　わらわはお主のような腐りかけた中年よりもっと若い美男子のパートナーなど★の数ほどいる中で、わざわざ爺を連れてきてやっているのだぞ！　　感謝しなさい。　ちなみに、次は爺の大好きな「フェイス」で絶壁だぞ。　喜べ！

す・す・好きなどと言った覚えはありませんが・・・。

黙らっしゃい！　サクサクっとわらわがリードで行くから、ビレイを頼むぞ！
万が一、トカゲや毒蛇に噛まれようとも、スズメバチに刺されようとも、熊に噛みつかれようとも、ロープを離すでないぞ。もし離したら、あとで斬り捨ててくれようぞ。わかったな、爺。

そんな、ご無体な～。


どうだ！　わらわのリードは華麗でスタイリッシュ。平山ユージの上を往くであろう。のう、爺。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

なんとか云わんかぁ！爺！

はぁ～、はい。

では、爺の番だぞ。今度は「チョンボ」するなよ。「二度」は無いからな・・・。



チョンボしないで登攀中の、のら人。　否、間違いました。「爺」です！　




これ爺！　わらわが撮った一番出来の良い写真　↑　を殿？のブログに掲載してつかわす。ありがたく思えよ！
くれぐれもチョンボはせず、真面目に励めよ。来月も連れて行ってやるからな！

はぁ！？
もう・・・・、脱藩しよっ！　（爆）


※この物語は一切の登場人物を含め、「フィクション」です。

コメント 6

すごいクライマーだったのですね。
小川山は2回ほど行きましたが、まともに登れませんでした。
スラブ、ハングの登攀、見事です。
加えて姫とも物語りも見事です。

by tochimochi (2011-07-05 08:47) 

tochimochi様
この写真だけで小川山と判断されたと思いますが、流石！でございます。
このストーリーはあくまで！フィクションであり（笑）、私からコメントはしにくい限りではございますが、のら人が「ヘタレ」であることは間違いないと思いますので（笑）今後とも宜しくお願い申し上げます。

by のら人 (2011-07-05 20:53) 

（笑）（笑）（笑）　力作、じっくりと拝見。　クライミングもやられるのですね。　だから、ふだんの山登りもレベルが高いわけですね。　!(^^)!
でも、お姫様も大したもんですね。　なかなか手厳しい。　でも爺様は結構快感のようですね。　（笑）
by Jetstream777 (2011-07-06 23:50) 

Jetstream777様
じっくりと！拝見されてしまいますと、色々と「アラ」がでてきてしまいます。（苦笑）　未熟、稚拙な文章表現力等々。　未熟なりの力作！ではあると思います。書いて疲れましたから。（爆）　主人公は「ヘタレ」でＯＫです。お姫様は厳しくとも、優しい「おなご」ですよ、実は・・・。＾＾
by のら人 (2011-07-07 22:46) 

小川山・・・
行きたい岩山です
まだ行ったことがありません
いつまでも見てしまいました
岩もなさるのですね＾＾
思わずひろたんがいつも言う会話も入っている
なんて思ってしまいました＾＾；
最近は暑い・・近くの岩で登っています
早く行きたいわぁ・・・・
クライマーにはひろたんはなれません
けどアルパインもなかなか上達しません
標高の高い山にいけたらいいかな＾＾
by ひろたん (2011-07-09 23:21) 

ひろたん様
ひろたんさんは立派なクライマーだとお察ししますよ。＾＾
自分は「ヘタレ」なので高いところは未だに恐い！ですしね。（苦笑）
でも岩を「やっている」のと、」やっていない」のではバリエーションルートに行くと明らかに違いがでてくると思います。日頃のゲレンデ練習はきっと、アルプスで活きてくる、と思いますよ。
ひろたん！　ガンバ！　ぞ！？　＾＾；
by のら人 (2011-07-10 11:26)