【明神岳主稜~単独登攀~】7/28 [バリエーション]
※青線が今回のトラック(岳沢小屋まで)です。
先週に仕掛けた「明神主稜」。
しかし、天候悪のため「上高地セレブプレイ?」となってしまった。 ^^;
近年常宿?となった「〇糸屋」は風呂もサウナもあり飯も美味しく、合部屋8000円(二食付)とリーズナブルである。 本物のセレブは五千尺か帝国に泊まりますけどね・・・、ああいう所は「ケダモノ」は出入り禁止ですから・・・。(苦笑) 自分は〇糸屋で充分でございます。
さて、明けた週末。
本当は、また天候悪を願っていたのかもしれない ・・・ 。
命の危険を感じる ・・・、 恐い ・・・ 、行きたくない ・・・ でも、行きたい ・・・ 。
心の葛藤とは裏腹に、体は勝手に「上高地」へ向う。 ^^;
生きて帰って来れないかもしれない ・・・ 。
しかし、生きて帰ってきてしまいました。 ^^
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上高地バス停 6:22発
前穂TOP 13:00着
前穂TOP 13:07発
岳沢小屋 14:35着
【Warning】
・明神岳主稜を縦走するためには、数箇所 ラッぺリング(懸垂降下)が必要になります。
故に、「登攀」の技術を単独で駆使出来ない方は、踏み込んではいけません。
・5峰直下ではルート取りにより、かなり激しいハイ松藪漕ぎが必要です。
・5峰以降、自らのルートファインディングの自信が揺るげば、即遭難の恐れがあります。
☆ 「恐怖」を感じながらも、「恐れず」、「慎重に」、そして「大胆に」、最後は自分の能力を信じて「成就」に向って突き進んで攀じれる方であれば、単独初見でも踏破可能だと思います。
毎度お馴染み?の7番天然クーラー。 ここから、「人の道」を外れます。 ^^;
急登が続きます。 高度を上げリッジ状が出てくるとフィクスロープが張ってありますが、これらは下降用のもので、登りは使用しなくても楽勝です。
標高2100m前後の岩場。 ここはフィクスロープが2本ありますが写真上右に外傾した岩場で、右側が特に絶壁で結構ヤバイです。 高所恐怖症の方はココでアウトでしょう。 (自分もココで帰りたくなりました) ^^;
ミヤマ大根とハクサンイチゲが多いです。
しかし、 ・・・ 5峰近くでは「道」も不明瞭で岩場を「ケダモノ」と化して進んでいった為、数回「踏みにじって!」いました。 生き残るためとは言え、申し訳ないことをしました。 しかし、自分は生き延びねばならなかったのです。 人間はその生存に賭けて「殺生」をするべく動物である、という認識が常に必要だと思います。
そして、自然に対し常に感謝の気持ちを忘れてはならない ・・・。
右から、明神4、3、2峰。
5峰方向。 藪っぽい道を朝露でズブ濡れになりながら登ります。
六百山と霞沢岳。
明神。右から5峰、4峰、3峰。
曇ったり、晴れたり、の展開。
朝のうちは見えませんでしたが、徐々に穂高が姿を現し始めました。 ^^
進行方向。 東側はガスっています。
4、3、2、そして主峰も少し見えています。 分かりますか?
5峰を振り返る。
5峰は実は巻いて4峰方向に進む、という数少ないレポがあったのですが巻き道が良く分からず、結局写真上の5峰頂上に立ちました。 実はそこまでの藪と岩が結構なモノで大腿筋の痙攣を既に引き起こしています。
50mロープを含め登攀装備で平時よりかなり重いのも理由です。
実は5峰頂上でこのままピストンで帰るか少し悩みましたが、今後の天候が悪くは無さそうだったので気持ちの良い久々のアルパインラインを突き進む事としました。
4峰は頂上近辺を楽勝、3峰は岳沢側を巻いて、2峰及び主峰が至近となりました。
とうとう、この辺りで大腿筋が吊り始めました。ストレッチやら休憩しながら慎重に進みます。
振り返って左3峰、右が5峰。 4峰は見えません。 素晴らしい縦走の昂ぶりが蘇ります。
そして、2峰(明神槍)です。
前穂方面。 素晴らしい ・・・ 。 誰もいない。 一人ぼっちの世界。
今回の核心部です。
2峰頂上から、今回の核心的作業を始めます。
先ずは安全そうな?シュリンゲにデイジーチェーンでセルヒビレイを取ります。
下を見下ろせば恐ろしい35mの垂壁です。
安全そうな比較的新しいシュリンゲを2本選び、自らのロープを通し誰もいないので小さな声で「ロープダウン!」と呟き、絶壁下へロープを放り投げます。
その後写真上、ロープの軽量化で7.9mm径をチョイスしたため、確保器はATC-XPを使用、スーパーフリクションモードにセッティングして懸垂致します。(細いロープでも抵抗が大きいので安心)
一発目の懸垂後。 良く見上げれば逆層の垂壁ですね。
降立ったテラスから手早くロープを回収し、直ぐに二発目のラぺル(懸垂)を始めます。
二発目の懸垂を終えて2峰を見上げる。 ヤ・バ・イ ・・・ ね。 ^^;
暫く歩いて2峰を振り返る。 左の尖っているのが明神槍の所以かな?
明神主峰は難しくはないです。通り過ぎて、左主峰、右2峰を俯瞰。 素晴らしい。言葉が出ない。
しかし、大腿筋は吊り天井。(爆)
さぁ! 前穂へ向けてラストラン!?です。
しかし、奥明神沢のコル(最低鞍部)手前で微妙な下降になりました。
少しクライムダウンしましたが、如何せん足が「吊り吊り ^^;」です。
上方を振り返ると直ぐそこに残置支点が ・・・。 使わない手はありません。 (爆)
しかし、ここの懸垂は自らのロープで落石させる可能性が高かったので結構緊張致しました。慎重に下ります。
これが最後の懸垂と知っていたのでロープは「グジャグジャ」のままザックに突っ込みます。
3ピッチ目の懸垂下降を無事終えて、「四つん這い」状態で前穂へ歩を進めます。
既に ・・・ 残されたのは、気力だけです。
この日の午後は雷雨の予報です。
可能な限り山頂まで、急ぎたい ・・・ しかし、足が言う事を効かない ・・・
ジレンマを気力で封じ、「ゆっくり進めば必ず勝つ!」 と自分に言い聞かせ進みました。
西穂方面。
何度振り返っても素晴らしい! 明神主峰と2峰。 奥に霞沢。
前穂頂上迄、あと少し ・・・ 。
痙攣と吊り、を繰り返す大腿筋を宥めながら牛歩で進む。
天候も持ちそうだ。 既に命の危険は ・・・ 無い。
そして、フィニッシュ。
前穂頂上には以前2回程来た事があるが、今回ほど感動した登頂は、無い。
近くの登山者に撮ってもらった。写真を撮ってくれた方は自分が明神から登っている情けない姿を見てくれていたようだ。 ^^;
摩訶不思議!? 前穂北尾根である。 目を凝らしても、誰もいない。
何故だぁ? 時間が遅いのか? それ程でも無い筈だが・・・13時である。
この人気尾根が何故? 理由は分からない。
奥穂。 最右涸沢岳の左に肩の小屋が見えていますね。
ロバの耳もジャンダルムも綺麗に見えています。 ^^
北穂まで ・・・。
紀美子平から、明神。 ・・・ 感慨深い。
前穂から1時間半位で岳沢小屋に辿り着きました。
下りの筋力は温存してあるので、快調に登山者を抜き捲くりました。
重太郎新道は快適です。 一般登山道の有り難さを再度認識いたしました。
が?! なんとも節操の無い ・・・ 。 だいぶ飲んでから、写真を撮りました。情けない。(苦笑)
岳沢小屋からの奥明神沢。 沢の右が明神。左が前穂。
夕方も晴れていました。 素晴らしい登攀を楽しめました。
生ビールも「ウマウマ!」です。 日本酒も「ウマウマ!」でした。 ^^;
今回は、上高地迄降りれる余裕がありましたが、念のため岳沢小屋に予約を入れておきましたので岳沢に宿泊しました。 晩飯だけ食べましたが、「旨い」 です。 この小屋のグループはその他結構ありますが食事・その他運営方法が似ています。
明神岳主稜をやる人間は今後も少ないだろう。
明神岳東稜であればバッドレスもあり、ひょうたん池から多少のアクセスはあるかもしれない。
それでも前穂北尾根と比較すれば極少数だと思う。
一般的に、「上高地」と言えば 「河童橋」、そして「明神池」が著名である。
何故、明神池から明神岳を連想させないのか?(晴れていれば眼前に見えるのに)
眼前に見えている雄峰(明神岳)に登りたいと思わないのか?
何故、登山道が無いから、といって直ぐに諦めるのか ・・・ 。
重太郎新道上で若者を追い抜く度に、疑問に思った。
そう言えば、この日上高地から岳沢小屋までの歩行距離は7.783km。
累積標高差は、 +1944m -1263m 距離が短い割に凄い標高差だ。
どうりで、足が吊る訳だ! ^^;
しかし、本年の山行の中で会心の1本だった事は間違いない。 大満足。 ^^
こんばんは。
お帰りなさいませ。ご無事で何よりです。
あら~っ、2週連続で上高地ですか?
ひょっとしたら先週河童橋あたりですれ違っていたりして・・。
もちろんワタクシは、そのあたりをチョロチョロ散策しただけです(^^ゞ
今週は穂高連峰が望めたのですね。
頂上からの眺めはまた素晴らしいですね。
ビールがさぞかし美味しかったことでしょう♪
by kuwachan (2012-07-29 22:22)
絶好調ですね。
のら人さんの本性が見える(笑)山行が続きますね。
富士山も、明神岳も見る山という感覚です。
あ、若者ではありませんが。(^^ゞ
by nousagi (2012-07-30 09:21)
毎週毎週の山行、それもバリエーションばかり・・・これでは下界の暑さを感じてる余裕もないですね。北尾根に人がいないとは確かに不思議です。やはり暑さで敬遠してるのでしょうか。
西糸屋は以前知人が勤務していましたが、今はどうしているやら・・・気になってきました。
by tochimochi (2012-07-30 12:44)
スゴイ! やりましたね! 明神登挙~前穂 おめでとうございます。
達成感もひとしお と察します。(^_^;)
一般登山道でも脚が攣っても大変なのに・・・ 踏破されたとは。
明神の麓から見上げるとあのギザギザの峰々、人を寄せ付けない感じです。 私も見るだけにしておきます。☺ 厳しいけど、北アルプスの稜線は清涼感がありますね。やっぱり、夏場は北アルプスですね~
by Jetstream777 (2012-07-30 13:14)
kuwachan様
奇遇ですね。 ^^
自分も雨のその日は、河童橋近辺で、チョロチョロ でしたよ。 ^^;
土曜に宿泊して、日曜の朝の悪天を確認して朝一のバスで帰ってきました。
怨念?を貯めて翌週再トライ。 今回はその「怨念パワー」で、美味しい生ビールをゲット!出来ました。
by のら人 (2012-07-30 19:07)
nousagi様
絶好調です! ^^
しかし、こんな状況から突然一転し命を落とす方を何人も見てきています。
今後も「慎重なケダモノ?」 で自然体を通したいです。
あと若者にはあえて苦言を呈しますが、自分を含めそれ以上の年齢層の方も、任意で!遠慮なく登って良いのですよ ・・・ 明神岳。 ^^;
by のら人 (2012-07-30 19:21)
tochimochi様
北尾根は不思議な光景でした。
前泊松本宿泊だったのですが、朝一4:45発の松電でロープ持ってる男女2人を見掛けましたが、多分涸沢で1泊して翌日5.6のコルからアタックっぽい感じでしたね。エイド用の備品まで持参しているようには見えなかったので、北尾根だと思われます。(屏風では無いと思う ^^;) 先輩には、「〇」が全てバレてしまいますが何故なのでしょうか? 西糸屋さん。 知人様が勤めていたのですね。 ^^
by のら人 (2012-07-30 19:40)
Jetstream777様
有難うございます。 ^^
自分はヘタレなので、平時以上に頑張りますと直ぐに痙攣や吊りを引き起こします。情けないですね。 ^^;
そう言えば、自分の2週間前に同じルートを登っている男性と現役美人モデルさんのブログを発見しました。 是非?ご参考までにどうぞ。 ^^
http://ameblo.jp/3037000/entry-11311869869.html
http://blog.kanon.mods.jp/?day=20120724
懸垂後のロープが回収出来なくなる恐怖を味わってます。 ^^;
by のら人 (2012-07-30 19:54)
臨場感と詩情あふれる素晴らしい山行報告に胸を高鳴らせながら拝読しました。
記録としても第一級の高さで、これは是非とも登らなければ!という気にさせてくれますね。
それにしても、前穂北尾根に人がいないとは何とも不思議なことです。
あの人気コースが…。なぜなのでしょう?
ところで西糸屋。サウナまであるとは驚きです。それでいて8000円はリーズナブルですね。
ビールが何とも美味しそうで羨ましくなりました。
のら人さんの果敢な行動力に乾杯です。
by 伊閣蝶 (2012-07-30 23:48)
今回も手に汗を握って読ませていただきました。
今週は、どちら?と思っていましたが、今週も暑いのなんのとか
言ってる次元じゃないところでお過ごしでしたね。
無事のお帰りなによりでした。
突然、ブログが更新されない…なんてことがないように
お願いしますよ〜!!!
by みんこ (2012-07-31 12:46)
伊閣蝶様
有難うございます。 乾杯! ^^
第一級とは恐れ多い ・・・ 。ケダモノの珍道中日記でございます。^^;
北尾根に人がいないのが、ビックリ! でしたね、ほんと。好天でしたし。
フリーソロを狙うなら、この日でしたね。残念。(苦笑)
西糸屋の別館は安いし、横尾と似ていますが唯一乾燥室が無いのが泣き所ですかね。 濡れたものは翌日までに絶対乾きません。故に、雨で停滞で使うより好天の日にリーズナブルに上手く使えれば美味しい宿だと思います。
by のら人 (2012-08-01 19:48)
みんこ様
今回も手に汗を掻かせてしまい、大変申し訳ございません。 ^^;
稜線は決して暑くは無かったのですが、宿泊した岳沢小屋の中!が、もう熱帯夜。(爆) 日中、直射日光下は暑く、しかし夕方は涼しいのですが、小屋の中は日中の熱を溜め込んでいて、暑くて寝れない状態でした。
多分28~30度。 女性には良いかもしれませんが、自分は無理! ^^;
今年は未だキノコを獲っていませんので、まだ死ぬ訳にはいきませんよ。^^
by のら人 (2012-08-01 19:56)
すごいですね。
本当にベテランしかできないコースですね。
by テリー (2012-08-09 19:35)
テリー様
ありがとうございます。
ロープワーク等の登攀を技術を知っていればチャレンジ可能です。
上へ向って攀じるクライミング能力は然程必要とはしませんので、逆にクライマーからは敬遠されるのでしょうね。 ^^;
by のら人 (2012-08-09 22:11)